第82号 モバイル機器用FCの市場投入が目前

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1.国家的施策
2. MCFC開発と実証試験
3.SOFCの開発
4.PEFCの技術開発
5.新型FCの開発
6.家庭用PEFCシステム
7.FCV最前線
8.自動車を除くFC移動媒体の開発
9.水素関連技術と供給システム
10.モバイル端末用超小型FCの開発
11.FC関連計測機器の展開
12.企業活動
・A POSTER COLUMN

1.国家的施策
 NEDOは水素エネルギーの規制緩和に向け、FCV、定置式FC、および水素インフラの3項目について、それぞれ3団体に委託して実証試験を含む検証を実施し、05年以降の認可に繋げることにする。FCV関連は日本自動車研究所、定置式は日本ガス協会、水素インフラは石油活性化センターが担当する。現在水素スタンドやFCV関連では計16の規制を、定置式では5つ程度の規制緩和が課題となっている。
(日刊工業新聞03年3月13日)

 
2.MCFC開発と実証試験
(1)MCFC研究組合
 NEDOプロジェクトにより、川越火力発電所に設置されていた300kW級動作圧4気圧の加圧型コンバインドシステムの小型実証プラントは、周辺機器のトラブルで運転を休止していたが、03年3月から運転を再開し、1万時間以上の実証運転を行う。又最終形となる動作圧12気圧の出力750kW級モジュールを用いた実証プラントについては、詳細設計が完了したので、同一構内で建設に着手し、04年から運転を開始して最終評価を行う予定である。これにより81年からスタートしたMCFCの国家プロジェクトは終了し、以後は民間主導の開発へ移行することになる。
 加圧運転により効率は向上するが、問題点は電解質中に電極材料のニッケルが多く溶出することによる寿命の短期化にあった。NEDOでは電極材料の改良や第3物質の添加などの対策でニッケルの溶出を低減させ、短絡発生までの時間を4万時間程度に延伸できる見通しを得ることができた。又NEDOは上記モジュールと既存のガスタービンとで構成したコンバインドサイクルでは、出力7MW級プラントの場合、送電端効率50%が可能になると試算している。
(化学工業日報03年3月5日)

(2)FCE
 丸紅が日本での販売権を持つアメリカFCE製250kWMCFCが、経済産業省から大気汚染のないゼロエミッション装置として認められた。同時に電気主任技術者が巡回だけで管理できる認可も獲得した。03年から1/3補助の60万円/kWで販売を強化、それと平行してIHIを有力なパートナーとして補機類やパッケージ化を国産化してコストを下げることにより、05年度には補助金なしの事業として市場育成を図る。FCEは250kW機をベースに、1,000kW、2,000kWクラスのシステムをそろえている。
(日刊工業新聞03年3月14日)

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3.SOFCの開発
(1)NTT
 NTTはグループでのCO排出抑制を目的に、新たにSOFCの開発を進め、出力200kW規模での実用化を目指す。04年内に試作、07年での実用化を描いている。NTTグループの主要7社は、国内電力消費量の0.75%を占めているが、情報技術の普及でエネルギー消費量が急増しており、COの排出量は2010年には90年比で3倍になる見通しである。電源のSOFCへの切り替えだけで、単位電力当たりのCO排出量を1割削減できると予想している。
(日経産業新聞03年3月3日)

(2)三菱マテリアル
 三菱マテリアルは、関西電力、大分大学、ファインセラミックスセンター、産業技術総合研究所と協力し、出力1kW規模の低温動作型SOFCによって、動作温度800℃で、電極1cm2当たり0.2Wの発電出力を実現した。この性能は開発目標より5割高い。電極材料は、大分大学が開発したランタンガレートの一種で、マグネシウム、ランタンなどで構成されており、電気伝導性が高い。03年内にも出力3〜5kW程度の中規模試作装置を作り、今後大型装置で試験して05年での実用化を目指す。
(日経産業新聞03年3月11日)

 
4.PEFCの技術開発
 荏原バラードは、純水素を燃料とした1.2kW級PEFCを、100万円の低価格で日本市場に投入する。OEM調達で、付帯設備を含まないFCモジュールの販売であるが、100万円の価格は今後のFC価格設定にも影響を与えるものと思われる。他方、同社は純水素燃料ながら1,500時間寿命のPEFCに、周辺設備をパッケージ化した量産型ポータブルFC“ネクサ”を250万円で03年から販売、3月までに20台を売り込む計画である。今回、ユーザーがFCモジュールを使ってシステムを組み上げる製品のOEM販売に着手したわけで、数十〜数百台を纏めて販売することを目指している。
(日刊工業新聞03年3月6日)

 
5.新型FCの開発
 名古屋工業大学の野上正行教授・李海濱研究員らのグループは、電解質に厚さ0.5μmのガラス薄膜を用いたFCで、発電実験に成功したと発表した。リンとシリコンの酸化物を材料に、ガラス薄膜を作製、表面に触媒の白金を塗って電極を構成し、水素と酸素を吹き付けたところ、最大で0.1mVの起電力が観測された。ガラス薄膜には、0.002μmの微小な穴が広がっており、水素イオンはこの穴を通過してアノードからカソードに到達する。水分管理が不必要である点に大きなメリットがある。動作温度0〜80℃程度で耐久性は数千時間に達し、又−30〜200℃でも利用可能であると報告されている。野上教授は「電極などを改良し、携帯電話などへの応用を目的に、1ないし2年後の実用化を目指す」と述べている。
(日刊工業、中日新聞03年3月5日、電気、日本工業新聞3月6日)

 
6.家庭用PEFCシステム
(1)NEF
 新エネルギー財団は、家庭用PEFCコジェネレーションシステムの実証運転実験を全国13ヶ所で進めているが、実証試験サイトの4ヶ所を一般公開することになり、2月28日、調布サイト(鹿島技術研究所内)で関係者を集めてオープニング式典と見学会が開かれた。この実証運転用PEFCは、荏原製作所、三洋電機、新日本石油、東芝IFC、トヨタ、松下電器産業の6社が提供する。使用する燃料は都市ガス、LPG、ナフサの3種類で、それぞれについて異なる環境下でデータを採取する。
(日刊工業、日本工業、建設通信、日刊建設工業新聞、化学工業日報03年3月3日)

(2)長府製作所
 住設機器大手の長府製作所は、年内にもFCを組み込んだ都市ガス利用一般家庭用コジェネレーションシステムの開発を始め、05年度での商品化を目指す。
(日本経済、日経産業新聞03年3月4日)

(3)東京ガス
 東京ガスは、家庭の温水需要を予測して効率的にエネルギーを供給する家庭用コジェネレーションシステムを開発した。必要な時に必要なだけ電力や温水を供給するソフトウエアを自社開発、PEFCと組み合わせてエネルギー効率を大幅に高めた。数年内での実用化を目指す。
(日経産業新聞03年3月6日)

(4)新日鉄化学
 新日鉄化学は、コールタール蒸留、コーキング、黒鉛化など、カーボン関連製品の一貫生産技術を生かして、PEFC用セパレータやリチウムイオン電池用負極材の開発と実用化に乗り出すことにした。前者については、2005年にも立ち上がると見られている定置式PEFCに焦点を置いて開発を進める積りである。同社はバインダー樹脂にエポキシを採用しており、従来のフェノールに比べて水への溶出物が少なく、したがって長期安定性に優れている点に特徴がある。低電気抵抗、強度、ガス遮蔽製なども要求性能を満たしている。当面、加工は圧縮成形法で対応していくが、低コスト化を目指して射出成形法の開発も急ぐことにしている。
(化学工業日報03年3月25日)

(5)岩谷産業
 岩谷産業は、家庭用1kWPEFCシステム向けに、プロパンガス(LPG)改質装置の自動運転実験を開始、性能検証を目的に7月まで実施する。CO選択酸化反応に替えて薄膜を使うので、従来の装置に比べてコンパクト化され、又600℃の低温で反応させるため、水素の生成効率(水素濃度75%)が高くなっている。FCからの運転情報により、自動的に改質プロセスを制御する仕組みが採用されている。
(日刊工業新聞03年3月25日、化学工業日報3月28日)

 
7.FCV最前線
(1)日産
 日産自動車は、アメリカUTグループのUTCFCと、FCV用FCスタックを共同開発し、早期の実用化を目指すことにした。先ず03年内に限定販売するFCVにUTCFC製PEFCを搭載、相互に技術者を派遣して更に実用性の高いFCを共同で研究開発し、それによって得た成果をベースに、将来はFCVを自社生産する積りである。アメリカの公道試験に参加している日産のFCVはバラード製PEFCを搭載しているが、同社はスタックの内部を公開していないため、十分なノウハウを得ることができなかった。他方日産はフランスのルノーとFCVの共同開発をしており、5年間で850億円の研究費を投じる計画を持っている。
(日本経済新聞03年3月4日)

(2)NKK・東京精電
 NKKと東京精電は、ハイブリッドFCV用高効率電圧変換器“スーパーSRインダクター”を共同開発した。NKKが部品を供給し、東京精電が製造した。既にダイハツ工業とトヨタ自動車が共同開発した軽ハイブリッドFCV“ムーブFCV−K−2”への採用が決まっている。FCと電圧の異なる2次電池との間にこれを設置して電圧を平準化させ、電気エネルギーを循環させる。これまでの製品に比べて発熱量を50%、騒音やノイズを60%軽減するとともに、冷却媒体の一体化で放熱や防水機能を向上させ、半分の大きさにまで小型化したと発表されている。
(日刊工業、鉄鋼、信濃毎日新聞、化学工業日報03年3月5日)

(3)GM
 GMは3月10日、液体水素方式のFCV“ハイドロジェン3”が国土交通省の認可を受け、12日から水素・FC実証プロジェクトに参加、日本国内で公道試験を行うと発表した。公道試験では航続距離400kmを実現する。液体水素の貯蔵量は4.6kg、最高時速は160km/hで、欧米では既に公道を使っての試験を行っている。GMは更に03年6月から運送会社のフェデラル・エクスプレスにハイドロジェン3を貸し出して、都内での集配物の搬送車両として活用し、様々な走行環境条件下でのデータを収集する予定。
(読売、産経、日経産業、日本工業、日刊工業、日刊自動車新聞03年3月11日、朝日新聞3月12日、電気新聞3月18日)

(4)DC
 ダイムラー・クライスラー日本は、3月11日、FCVの最新モデル“F−Cell”が国土交通省の認可を受け、水素・FC実証プロジェクトに参加して、日本での公道走行試験を開始すると発表した。F−Cellは1994年の初代モデル以来8代目で、メルセデス・ベンツAクラスをベースに圧縮水素方式を採用した。最高速度は150km/h、航続距離は150kmである。同社は03年内に60台を生産し、アメリカ、ドイツ、シンガポールなどに供給するが、日本市場では、03年後半から一般事業者向けに最大10台のリース販売(料金は未定)を開始する予定。
(朝日、読売、日本経済、日経産業、日本工業、日刊工業、日刊自動車新聞03年3月12日、電気新聞3月18日)

(5)東邦ガス
 東邦ガスは、3月13日、トヨタ自動車のFCVをリース方式で購入する方針を明らかにした。5月中にも納車できる見通しである。東邦ガスは02年10月に天然ガス改質の水素ステーションを自社の総合研究所に設置しており、今後FCVの普及をにらんで、水素供給設備の技術開発を進めていくことにしている。
(中日新聞03年3月14日)

 
8.自動車を除くFC移動媒体の開発
 九州共立大学(北九州市)は、キュー・エム・ソフト(福岡県遠賀町)と共同で、中国から直接輸入した中国製FC(200W、24V)を使って、水素燃料で走る電動カートを作製した。制作費を150万円程度に抑えることができた。車両はカーボン製で、長さは4m、体重60kgの人が乗った場合、時速30km/hで3〜4時間の走行が可能であると藤井邦夫同大学教授は述べている。
(日刊工業新聞03年3月18日)

 
9.水素関連技術と供給システム
(1)九大・西部ガス
 九州大学院工学研究院と西部ガスは、2月27日、水素やFC関連技術研究開発で包括提携すると発表した。共同研究や研究者の相互派遣を通じて、それぞれ単独では限界があった統合的な技術開発を進める。例えばFCVの走行距離を伸ばすための、高圧水素ガスタンクの素材開発などの課題に取り組む予定。
(西日本新聞03年2月28日、日本経済新聞3月1日)

(2)石油産業活性化センター
 石油産業活性化センターは、3月4日、出光興産や新日本石油、コスモ石油と協力して灯油の効率の高い水蒸気改質技術、および起動時間が2〜3分と短い部分酸化改質技術を開発したと発表した。灯油は分解しにくく、硫黄の含有量も多いので改質は難しいとされていたが、分解を促す触媒や硫黄の除去剤を開発し、効率よく改質することに成功した。装置の小型化、超寿命化、更なる効率の向上と、起動時間を1分以内に縮めることを目指して実証試験を行い、家庭用コジェネレーションシステムの実用化に貢献する。
(日経産業、日刊工業新聞03年3月5日、化学工業日報3月7日)

(3)GMとシェル
 GMとロイヤル・ダッチ・シェルは、3月5日、FC事業で提携すると発表した。シェルグループでFC事業を手がけるシェル・ハイドロジェンが、アメリカ・ワシントンDC内にある既存のガソリンスタンドに水素充填スタンドを開設し、FCVの発電システムから水素の流通、貯蔵、走行システムに至る実証実験を開始する。先ず実証実験のために、03年5月からGM製“ハイドロジェン3”6台を導入する予定である。シェル・ハイドロジェンのドナルド・ヒューバーツCEOは「政府にFCVの普及を後押ししてもらうよう、首都ワシントンを選んだ」と述べ、政府関係者や議員などの環境・燃料政策担当者にFCVの利用を促すことにしている。
(日本経済新聞03年3月5日、朝日、日経産業新聞3月6日、産経、日刊自動車新聞3月7日)

(4)岩谷産業
 岩谷産業は、新型のFCV用小型移動式水素充填装置を開発、全国で営業活動を展開する。新装置は、工業用水素ボンベを束ねた従来装置に比べて、重量では半分の1トンに抑えながら、水素供給能力は倍増して約60mになり、FCV2台を満タンにすることができる。今後は全国8ヶ所にある岩谷ガスの主要工場にこの水素充填装置を配備し、各地域の自治体や自動車メーカのFCVイベントなどでの活用が得られるようサービス体制を整える。
(日本工業新聞03年3月6日)

(5)水素ステーション
 自動車メーカ5社が、JHFCプロジェクトの一環としてFCVの走行試験で使う水素ステーションが、3月12日に横浜市鶴見区大黒町でオープンし、開所式が開かれた。コスモ石油が建設し、脱硫ガソリン改質方式が採用されている。
(日本経済、日本工業、日刊工業、中日、日刊自動車新聞、化学工業日報03年3月13日)

(6)応微研
 バイオベンチャーの応微研(山梨県)は、生ごみを微生物で分解し、水素を効率よく生成させる水素工場の実用化に乗り出す。実験プラントを持つ研究施設を4月にオープンし、実証試験を経て、1年以内に実用化の目途をつけることを目指している。実証実験に使う微生物は2種類、生ごみから発生するメタンを分解し水素に変える株と、生ごみ中の食物成分から直接水素を取り出す微生物で、いずれも水素生成の基本的な仕組みについての検証を終えている。
(日刊工業新聞03年3月17日)

(7)エイチ・ツー・ジャパン
 電制(札幌市)の子会社で水素利用システム開発のエイチ・ツー・ジャパン(同)は、シロアリから抽出した細菌を使って生ごみから水素を発生させるシステムを、北里大医療衛生学部と共同で開発した。菌と生ごみを混ぜて発酵させると水素が発生するが、シロアリ菌は他の菌に比べて水素の発生速度が速く、発生量が多いのが特徴である。ごみを発酵させてメタンガスを発生させ、それから水素を取り出すシステムに比べると、期間が1/20程度に短縮できる。又発酵槽が小さくて済むとともに、メタンから水素を改質する装置が不要であり、初期投資が従来の1/3程度に削減できると述べている。同社は03年度中にもFCとこれを組み合わせた発電プラントを建設する予定。
(北海道新聞03年3月18日)

(8)東北大
 東北大学の高村仁助教授は、大気中から酸素を効率的に取り出すことができる新型の膜を開発した。開発した酸素透過性セラミック膜は、電子を透過するスピネル型鉄系酸化物と、高い酸素イオン導電性を持つセリウム系酸化物などの複合体で、両方の分子を樹脂に取り込ませて固めると、0.1μm程度の微細粒子状で混合させることが可能になる。したがって、この膜は酸素イオンと電子の双方を通過させる性質を持つ。この膜を利用し、酸素を都市ガスなどに含まれるメタンと反応させる部分酸化改質法によって、水素を生成することができる。1,000℃では1cm2当たり10分間で約13mLの酸素を通過させる能力があるので、厚さ0.3mm、10cm四方の膜を3枚使えば、出力1kWのFCに必要な水素を供給する改質装置を作ることが可能と予想されている。部分酸化改質法のため、FCシステムの起動時間を1/3にまで短縮することができると同助教授は述べている。
(日経産業、日刊工業新聞03年3月24日、河北新報3月26日)

(9)大阪ガス
 大阪ガスは、価格と設置スペースを従来の半分に抑えた天然ガス改質水素製造装置を開発、03年4月から販売する。濃度75%の水素を生成する改質装置と水素濃度を99.999%以上にクリーンナップする生成装置から成り立っており、大阪ガスが両装置を一体設計し、パッケージ化することにより小型化が実現した。価格は水素製造能力が30m3/h機(設置面積5.8m2)の場合約4,000万円で、当面はFCV用水素ステーション向けを目的とするが、それと平行して光ファイバーメーカなどオンサイト水素製造装置としても売り込む積りである。04年3月投入予定の同100m3/h機、05年3月投入予定の同300m3/h機と部品は共有化されており、それもコストダウンに繋がっている。水素製造コストは、30m3/h機では50円/m3強になるが、100および300m3/h機では、それぞれ45円および35円/m3になると積算されている。
(日刊工業新聞03年3月28日)

 
10.モバイル端末用超小型FCの開発
(1)東芝
 東芝は、3月5日、ノートパソコン用DMFCを開発したと発表した。出力は最大20W、平均12w、50mLの燃料で5時間の発電が可能である。DMFCに導入する燃料は3〜6%に希釈したメタノール水溶液であるが、希釈液をそのまま貯蔵すると燃料タンク(カートリッジ)が大きくなるので、貯蔵には高濃度メタノールを使い、DMFCで排出される水の1部を利用してメタノール濃度を最適化する調整システムを開発した。その結果、燃料タンクを1/10にまで小型化することができた。今回使用したノートパソコンでは、DMFCに使用状況を信号送信するようソフトウエアや接続部が設計されており、使用状況により発電量を調節することが可能である。又DMFCを外せばリチウムイオン電池を使用することができる。メタノールはまずパソコン専門店での販売からスタートするが、普及に応じてコンビニやキオスクでの販売を想定している。04年中での製品化を目指す。
(読売、朝日、毎日、日本経済、産経、電気、日経産業、日本工業、日刊工業、東京、電波新聞、化学工業日報03年3月6日)

(2)富山県
 富山県内企業による“若い研究者を育てる会”は、DMFCの単セルでの実験において、常圧で電解質膜1cm2当たり70mWの電気出力を実現した。電解質膜はメタノールを吸収して膨張し、発電効率が低下する傾向があったが、同会は多孔質のフッ素系樹脂に、スルフォン酸がついたフッ素系樹脂を含浸させることにより、電解質膜の膨張を防ぐことに成功、更にスルフォン酸がついているフッ素系樹脂とカーボン粉末を同じ比率にして構成した電極を、電解質膜表面に亀裂のない滑らかな形状で成形する技術を開発し、上記のような高出力を達成した。携帯電話などモバイル用電源として05年での実用化を目指す。
(日刊工業新聞03年3月5日)

(3)電機各社
 NEC、東芝、日立製作所などは、ノート型パソコンや携帯電話機など携帯情報機器に使う超小型FCの規格統一に乗り出す。メタノールのような危険な物質を使うため規格統一で安全性を確保するほか、どの携帯機器にも使えるようにする。具体的には、日本電気工業会や電子情報技術産業協会、電池工業会が標準化に向けて設けた準備委員会で統一規格作りに取り組み、国際標準も狙うことにしている。電池の取り付け方式や大きさは、パソコンや携帯電話など品目別に異なる模様である。03年4月から経済産業省と本格協議を開始、03年度中に詳細をまとめ、製品に反映させる。カシオ計算機、キャノン、三洋電機、シャープ、ソニー、富士通、松下電器産業、三菱電機なども参加する見通しである。
(日本経済新聞03年3月21日)

(4)日立
 日立製作所は、05年を目途にノートパソコン用マイクロFCの実用化を目指す。従来のフッ素水素系に替わって、メタノール透過率が1/10以下の炭化水素系膜を開発すると共に、触媒金属をナノ粒子化し、かつ凝集を防ぐことに成功した。これらの技術により、10時間の使用時間、ならびに既存2次電池以下の低コストを実現する意向である。
(化学工業日報03年3月26日)

 
11.FC関連計測機器の展開
 横河電機は3月27日、FCに関して単セルから大容量スタックに至るまで、インピーダンスを直接測定できるインピーダンスメータ“WT1600FC”を28日から発売すると発表した。1.5〜800Vの電圧を直接入力することが可能で、電流センサーを利用すれば最大600Aまで測定できる。今まで小容量向けはあったが大容量向けはこれが初めてで、要素研究から製品化まであらゆる開発段階で利用可能なインピーダンス測定器が商品化されたことになる。価格は1チャンネル入力で160万円から。
(電気、日刊工業新聞03年3月28日)

 
12.企業活動
 新日本石油は、FC事業の組織を拡充する。FC事業部を4月1日付で3分割し、商業化に向けた実証試験や販売計画の立案機能などを強化する。40人弱の人員も50人強に増員する方針である。
(日経産業、日本工業新聞03年3月17日)

 
 ―― This edition is made up as of March 28 , 2003. ――


・A POSTER COLUMN
MITの調査報告
 アメリカ・マサチューセッツ工科大学は、3月6日までに「ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車が、現時点ではFCVよりも環境保護の面で優れている」との調査報告書を纏めた。ただ、将来的にはFCVが優勢になると述べている。
(鉄鋼新聞03年3月10日)

ナノカーボンに関する話題
 カリフォルニア大学ロスアンジェルス校のグループは、“カーボンナノスクロール”と呼ばれる新しい構造のナノ炭素材料の製造法を開発した。これは紙を丸めたような構造で、表面積が非常に広く、FCの電極材料や水素吸蔵材としての応用が期待される。室温において、黒鉛とカリウムのような単純な原料から造られるので、カーボンナノチューブに比べると数分の1の価格で製造できる可能性を持っている。
(日経産業新聞03年3月12日)
 千葉大学理学部の金子克美教授と科学技術振興事業団(JST)基礎的研究発展推進事業のグループは、カーボンナノホーンに高いメタン吸蔵特性のあることを発見した。ホーン粒子が集まった隙間で働くファンデルワールス力がメタンを吸引し、壁面に開けた“ナノウインドウ”を通じて、広いホーン粒子内部でメタン分子が多量に貯蔵されると説明されている。金子教授等が粉末状で、常温常圧下におけるメタン吸着密度を調べたところ、1mL当たり0.22gとなり、この値は同様の働きのある活性炭素に比べて50%高い。メタンは沸点が低くて液化しにくいが、今回の結果はメタン吸蔵量が、液体メタンの7割程度に相当することを示している。更にペレットにしたところ、アメリカなどで実用化の目標値とされている数値(35気圧;1Lの吸着剤に150L)を超えたと伝えられている。
(日刊工業新聞03年3月12日)
 NKKは、高純度の多層チューブをテープ状に合成して製作した自社製カーボンナノチューブが、優れた電子放出特性を持つことを確認し、薄型テレビの表示装置材料、蛍光表示管、FCなどの用途を見込みサンプル出荷を始めた。
(日経産業新聞03年3月17日)

FCV世界市場規模の予測
 ダイムラークライスラーはFCVの世界市場規模が、2010年までに50万台に達すると予測。現在の世界年間新車登録台数5,700万台を基準にすると、FCVは1%弱のシェアを占めることになる。同社のトーマス・ウエーバー研究開発担当取締役は「上記の数字には満足であるが、それを達成するためには、価格や日常的使用に対する適正化の問題、インフラ整備など、超えるべき高いハードルが残されている。又内燃方式からFC方式に完全移行する前に、ハイブリッド方式が登場することになろう」と語っている。
(日刊自動車新聞03年3月27日)