第90号 ボーイング社次世代旅客機にSOFC

Arranged by T. HOMMA
1.国家的および公的機関による施策
2. SOFCの開発とその応用
3.PEFCの要素技術開発
4.家庭用PEFCコージェネレーションシステムの開発実証と事業展開
5.FCV最前線
6.水素ステーション技術と実証研究
7.改質および水素生成技術
8.モバイル機器用DMFCおよびマイクロFC開発の動向
9.FC用計測機器の開発と販売
10.国際標準の確立等
・A POSTER COLUMN

1.国家的および公的機関による施策
 高圧ガス保安協会(KHK)は、FCV用水素圧力容器や水素ステーションの安全性を検証するため、”FCシステム技術調査委員会(委員長;小林東工大教授)”を発足させ、検討を開始した。KHKでは今後3年間を掛けて海外の規制に関する調査や水素漏洩などの実証実験を行い、自動車、燃料の業界団体が行う例示基準の策定を支援する。
(化学工業日報03年10月31日)

 
2.SOFCの開発とその応用
(1)ボーイング
 アメリカ・ボーイングは次世代旅客機“7E7”で、機内用電源としてSOFCを採用する検討を始めた。「純水素を必要としない、発電効率が高い」がSOFC選択の理由として挙げられている。これまで航空機の客室内空調には、エンジンから導入した高温空気の熱を使ってきたが、“7E7”では経済効率の大幅な向上を図るため、空気取り込みダクトなどを省略できる電化空調とすることを計画している。又航空機は機内の電源を、従来は蓄電池およびエンジンの余力を利用した小型発電機に求めてきたが、SOFCの導入で効率を向上させるとともに、エンジンの設計自由度を増し、結果として燃費向上に繋げることを目指している。08年の1号機就航から数年後に実現したいとの意向を、来日した環境戦略担当者が明らかにした。
(日本経済新聞03年10月19日)

(2)物質・材料研究機構
 物質・材料研究機構エコマテリアル研究センターの森主席研究員らの研究グループは、500〜700℃の低温域で高い性能を発揮するSOFC用電解質を開発したと発表した。セリア系固体酸化物電解質で、原子10〜50個からなるマイクロドメインを、従来より遥かに小さい1nm前後の大きさに制御することによって、イオン導電率が向上することを確認した。
(日経産業新聞03年10月20日)

 
3.PEFCの要素技術開発
(1)名古屋工業大学
 名古屋工業大学工学研究科の春日助教授は、リン酸塩ガラスをハイドロゲル化する技術を用いて、PEFC用電解質膜を開発した。水素イオンが移動しやすく、従来の固体高分子膜よりも高いイオン伝導性を示し、実験では0.4W/cm2の電気出力を得ることができた。又作動温度範囲は130℃から−20℃までと広く、ゲル状なので様々な形状に合わせて貼り付けることや薄膜化、あるいは大型化することが可能、従来の1/1000のコストで製造することができる。
(日刊工業新聞03年10月24日)

(2)バラード
 バラード・パワー・システムズは、FC技術の他企業へのライセンス供与に踏み切ることにした。従来は技術の流出を防ぐためにライセンス供与に応じてこなかったが、希望する企業に技術供与してFCの市場拡大を狙うとともに、ランセンス料によって自社の開発費を賄う戦略に転換する。 (日本経済新聞03年10月24日)

(3)石福金属工業
 石福金属工業はPEFCやDMFC用白金ナノ分散触媒を開発した。触媒粒子の平均粒径は2〜3nmで、エネルギー関連産業に研究開発用に販売する。
(日経産業新聞03年10月27日)

(4)住友金属
 住友金属工業は、PEFCのセパレータ用ステンレス薄板を開発し、量産化できる見通しが立ったと発表した。約4年前から同社総合技術研究所(尼崎市)が、ホンダと協力して研究開発を進めてきた。
(朝日、日本経済、産経、日経産業、日本工業、日刊工業、鉄鋼新聞、化学工業日報03年10月29日、日刊自動車新聞10月30日)

 
4.家庭用PEFCコージェネレーションシステムの開発実証と事業展開
(1)東京ガス
 東京ガスは、同社が家庭用1kW級PEFCを発売する2005年4月から、PEFCを使用する全ての家庭を対象にガス料金を割り引く選択約款を導入することにした。現在の家庭用ガス温水床暖房契約「暖らんプラン」以上の下げ幅になると思われる。
(電気新聞03年10月23日)

(2)東邦ガス
 東邦ガスは、10月30日、出力1kW級家庭用PEFCコージェネレーションシステム向けの最適出力制御技術を独自に開発し、一般家庭での実証試験を開始したと発表した。最適出力制御は季節や時間帯、各家庭での異なる負荷パターンに対応し、最も効率的にシステムを稼動させる役割を担う。2005年での商品化を目指す。
(電気、日本工業、日刊工業新聞03年10月31日)

 
5.FCV最前線
(1)東京モーターショウ
 10月25日から幕張メッセで行われた第37回東京モーターショウで、各社は独自のFCVを公開した。トヨタ自動車の”Fine-N”は、電気モータや水素タンクなどを床下に納めて広い車内空間を確保し、車輪ごとに取り付けられた4つのモータ、ハンドル、ブレーキを電気信号で最適制御する”バイワイヤー”技術を採用している。更に車が運転者の顔を認識し、運転席の座席位置や音響、空調を自動調整する生体認識システムも取り入れて未来カーに仕立て上げられている。ホンダは和風の装飾を施したデザインが特徴的なFCV”KIWAMI”を展示、日産は小型FCV”EFFIS”を出展した。
(中日新聞03年10月23日)

(2)YUASA
 YUASAは10月22日、電動2輪車用DMFCのセルスタックについて、ヤマハ発動機と共同研究を進めていることを明らかにした。試作品の出力は500Wで、大きさは幅20cm、奥行き26cm、高さ13.4cmである。
(電波新聞03年10月23日、日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報10月24日)

(3)日産
 日産自動車は国内でのFCVリース販売の開始時期を、04年3月末に決めた。リース価格は月額80万から120万円の範囲で検討している。スタックはUTCとバラード、自社製の3本立てであるが、最初に販売するのはUTC製のみとなる。
(日刊工業新聞03年10月27日)

(4)第1汽車集団公司
 中国最大の自動車メーカ、第1汽車集団公司のCEOは、FCVに関してトヨタ自動車の技術を導入する考えを明らかにした。「中国でも環境問題は非常に重要で、トヨタなどとFCVについて様々な取り組みを検討している」と述べた。
(日刊工業新聞03年10月27日)

 
6.水素ステーション技術と実証研究
(1)JFEC
 JFEコンテイーナー(JFEC)は、10月24日、カナダ、イギリス、アメリカ、オランダの企業や政府が共同で進めているFCV向け高圧水素供給インフラ・システム実証の国際プロジェクトに、日本企業として唯一参画したと発表した。同プロジェクト(CH2IP)は、1回の充填で約500km走行できる70MPaの高圧水素ガス充填ステーションの建設、貯蔵、輸送システムの開発を目指して一連のシステム実験を行うもので、実証データを関連企業に提供するとともに、同インフラ・システムの世界標準化を確立することに目的をおいている。
(日経産業、電気、日刊工業、鉄鋼新聞、化学工業日報03年10月27日、日刊自動車新聞10月30日)

(2)栗田工業等
 栗田工業、シナネン、伊藤忠エネクスの3社は、JHFCによるFCV用相模水素ステーションの建設に近く着工すると発表した。水電解型でコンパクトな車載型とし、トラックに搭載した装置で水素を製造し、複数の水素ステーションを巡回して水素を供給する方式である。オンサイト供給を目的とする。相模原市のステーションの投資額は約3億円。
(日経産業、日本工業、日刊工業新聞、化学工業日報03年10月28日)

(3)大阪
 大阪府や企業などが03年9月に発足させた”大阪FCV推進会議”が、大阪府中央区の府庁第1駐車場に移動式水素ステーションを設置し、10月30日に開所式を行った。FCV2台に水素を充填できる容量を持つ。岩谷産業が製作した。
(読売、朝日、産経、日本工業、日刊自動車新聞03年10月31日)

 
7.改質および水素生成技術
(1)東京理科大学
 東京理科大学の工藤教授は、紫外線を浴びると水を分解して水素を生成する光触媒を開発した。光触媒機能を持つナトリウムとチタンの酸化物にランタンを加えた粒子で、粒子の直径は100nmから3μm、形状も10nm程度の段差を持つ複雑な構造とすることにより、水との接触面積を増やしている。400Wの水銀灯で紫外線を当てたところ、水から500mL/hの割合で水素を生成することができた。
(日経産業新聞03年10月20日)

(2)国立環境研究所
  国立環境研究所は、バイオマスおよび洋上風力発電を使う水素製造技術の開発に着手する。「バイオ資源・廃棄物等からの水素製造技術開発」では、廃木材や古紙、廃プラスチックなどを原料に、熱分解および微生物分解により水素を高効率で生成する技術を開発するとともに、エネルギーを自給自足できる地域分散型システム構築も研究する。「洋上風力発電を利用した水素製造技術開発」では風力発電で得られた電力で海水を電気分解する水素生成技術の開発で、風力発電機を支える大型浮体構造物の開発等が含まれている。予算は03年度60億円、04年度には130億円を要求している。
(日経産業新聞03年10月30日)

(3)エフ・シー・シー
 エフ・シー・シーは、九州大学の北岡助教授と共同で、廃棄物から取り出したメタノールを水素に改質するシート状の触媒”多孔質ファイバー触媒シート”の共同研究を始めたと発表した。06年8月までに同シートを使った水素生成装置の試作品を完成するする計画である。
(日刊工業新聞03年10月30日)

(4)三菱化工機
 三菱化工機は、水素製造装置事業を拡充、特に水素ステーション向けに販売体制を整える。水素ステーション向けでは、JHFCの一環として建設された横浜旭や千住水素ステーションで受注している。
(化学工業日報03年10月31日)

(5)ウチヤ・サーモスタット  ウチヤ・サーモスタットは、東工大の大塚教授と共同で、大きさが20nmの鉄粉と白金触媒に水を加えることによって水素を取り出す車載用FC向けの水素発生装置を開発した。電動スクーター用に重量2kgの装置を試作した。
(日本経済新聞03年10月31日)

 
8.モバイル機器用DMFCおよびマイクロFC開発の動向
(1)JEMA
 日立、東芝、NECなど電機各社がノートパソコンや携帯電話用小型FCの規格統一のため、10月中旬に日本電機工業会(JEMA)に“超小型FC標準化委員会”を設置し、3年以内に規格を策定することにした。電機大手など16社や関連する業界6団体も参加し、メタノール燃料容器の接続方式やFCの出力、燃料消費量など基本性能の規格、それらの試験手法などを標準化してパソコンや携帯機器向けにFCの普及を図る。法令については各省庁と調整することになる。
(日本経済新聞03年10月20日)

(2)産総研
 産業総合技術研究所は、10月22日、多孔質ガラスを携帯機器向けDMFCの電解質に利用する技術を開発したと発表した。従来のフッ素系電解質膜に比べて発電効率が高まり、高濃度のメタノールを利用することができる。多孔質ガラスにはnmサイズの無数の穴が開いており、水素イオンのみを通過させる。同一条件で従来のフッ素系膜と比較すると、最高出力が1.5倍程度に高まったと報告されている。
(日経産業新聞03年10月23日、化学工業日報10月24日)
 産業技術総合研究所生活環境系特別研究体は、多孔質ガラス電解質膜を用いたDMFCの発電実験で、セル電圧0.35Vを観測した。この電解質膜は平均4nmの細孔に導電性有機分子を修飾したもので、膜厚は0.5mm、両面に白金ルテニウム触媒(アノード)、白金触媒(カソード)を担持した電極を配置したMEA構造である。64重量%メタノール水溶液と酸素を導入して、電流密度10mA/cm2において0.35Vを観測した。
(日刊工業新聞03年10月27日)

(3)東工大
 東京工業大学の初沢教授と早瀬助手の研究チームは、厚さ100μmのシリコン基板から携帯機器用DMFCの電極板を製造する技術を開発した。半導体の加工技術が転用できるため、効率的な生産が可能であり、又表面エッチング処理して燃料の流路を加工する。
(日経産業新聞03年10月28日)

 
9.FC用計測機器の開発と販売
 エフアイエス(伊丹市)は、FC用ガスセンサーを開発、近く本格出荷する。水素漏洩検出用センサーと改質ガス用メタンセンサーで、高選択性を持ち高濃度検出ができる点に特徴がある。水素センサーは水素濃度0.1%から2.0%の検出範囲を持つ。既にセンサー単体を北米に出荷しており、近くこのセンサーを核に駆動回路や信号処理回路を組み合わせることによりモジュールとして供給する予定、価格は500円/個にまで引き下げる計画である。
(日刊工業新聞03年10月27日)

 
10.国際標準の確立等
 11月19〜21日にアメリカDOE主催の水素経済に向けた国際会議(JPHE)に参加する国が日本を含め15カ国になった。閣僚級が参加、アメリカ主導で水素社会構築への国際的なパートナーシップを形成するのが目的であり、プランニング、実務、官民連携リエゾン委員会の3委員会が設置される。中心的な議題は水素・FC関連技術の国際的標準化・規格化の推進で、技術開発協力やインフラ整備の問題も討議される。
(日刊工業新聞03年10月28日、31日)

 
 ―― This edition is made up as of October 31 , 2003. ――


・A POSTER COLUMN
2003東京国際自動車会議での発言から
日経BP社が主催する”2003東京国際自動車会議”が10月20日、都内のホテルで始まった。FCVについてのセッションでは、トヨタの滝本正民専務は「水素貯蔵方法などもう1段の技術革新が必要であり、又今の1台数億円から大幅なコスト削減が欠かせない」、ホンダの荻野道義専務は「30年もらえれば普及させられるが、売れるための条件として、地球に優しくとの意識の広がりが必要」、又GMのローレンス・バーンズ副社長は「このまま石油に依存し続けることはできない。長期的に水素が自動車燃料として重要になる」と述べた。
(朝日、日経産業新聞03年10月21日)

水素エンジン車5年以内に発売
(1)BMW
 BMWのヘルムート・パンケ社長は、10月21日、液体水素を燃焼させて走行する水素エンジン車を、5年以内にヨーロッパで発売する方針を明らかにした。同社は20年前から水素エンジンの研究に取り組んでいたが、実用化の目途が得られたと述べている。
(読売新聞03年10月22日)
(2)マツダ
 マツダの井巻社長は、ロータリーエンジン(RE)を活用した水素自動車を、3〜4年以内に実用化する方針を示した。同社はスポーツカー”RX−8”をベースに開発中の水素REを搭載した研究車両”RX−8ハイドロジェンRE”を、東京モーターショウに初公開、社長はRE車の商用化に意欲を見せた。回転型のREは各工程の空間が区切られているため、温度上昇を抑えやすい特徴があり、水素燃料の課題である安全性で優れた利点を持つ。
(中国新聞03年10月23日)
 マツダは05〜06年に、水素RE車をリース方式で国内市場に導入する。ガソリンも併用できるバイフューエル方式。燃料となる水素高圧容器のコストが高いため、車両コストは現行では通常のガソリン車に比べて2倍程度になる模様である。
(日刊自動車新聞03年10月30日)

Well-To-Wheel効率の比較
 トヨタ社の中で最も総合効率(Well-to-Wheel Efficiency)が高いのはハイブリッド車の新プリウスであった。カローラなどのガソリン車は14%、天然ガス燃料のFCHVは29%、新プリウスは32%となった。なお走行効率についてはガソリン車が16%、新プリウスが37%、FCHVは水素エネルギーの50%となっている。なお水素の燃料効率は58%に過ぎない。
(朝日新聞03年10月27日)

FCV向け需要好調でバラードの赤字幅が減少
 バラード・パワー・システムズの7〜9月期決算は、売上高が前年同期比0.4%増の2,816万ドルとなり、最終赤字は同910万ドル減の3,110万ドルになることが分かった。売上高の内、FCV向けが1,429万ドルと前年同期比2.2倍と好調、最近ではメルセデス・ベンツのバス24台がヨーロッパの10都市に納入されたし、日本でも三菱自動車が同社製品を導入した。
(日経産業新聞03年10月31日)