第118号 韓国サムソンSDIがPMP用DMFC試作
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.国際標準や基準制定作業の動向
4.SOFCの研究開発と実証運転
5.PEFC要素技術の開発
6.家庭用PEFC実証運転
7.FCV最前線
8.水素生成、精製、貯蔵および輸送技術の開発
9.マイクロFCおよびDMFC技術の開発
10.FCおよび水素関連計測技術
11.再生可能エネルギーとFCの連携システム
12.FC補機類および関連技術の開発
1.国家的施策
 中央環境審議会総合政策部会環境研究・技術開発推進戦略専門員会は、環境対策技術の研究開発のあり方について報告書を纏めた。脱温暖化を目指す技術分野では、今後5年間の重点投資課題として、温室ガスモニタリング体制の確立や脱温暖化社会のデザイン研究、再生可能エネルギーや水素・FCなどの新しい社会システム構築のための技術開発に充てるなどの成果目標を設定した。この他、情報技術、ナノ技術、バイオ技術の先端技術を環境分野に積極活用する方策も示された。 
2.地方自治体による施策
 千葉県はバイオマス発電や風力発電など、次世代エネルギーの研究やそれらの積極利用に取り組む産官学連携組織“千葉県新エネルギービジネス産業振興研究会”を06年度に設立する。研究会では、まず水素を使った研究に力点をおき、FCの最新動向の情報交換や、水素製造や供給技術開発の支援方法を探る。(日経産業新聞06年1月30日)  
3.国際標準や基準制定作業の動向
 国連欧州経済委員会(UN/ECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)は、FCVに関する世界統一基準策定の具体的な擦り合わせ作業に入る。レギュレーション作りは衝突安全基準と排ガス基準を共同で検討する会議体で取り組むが、衝突安全基準に関する話し合いがメーンになる模様。(日刊自動車新聞06年1月28日)  
4.SOFCの研究開発と実証運転
(1)日本ガス協会等
 日本ガス協会は、SOFCを一般家庭や業務用で設置するための規制緩和、PEFCの一層の規制緩和と大幅なコストダウンを目指して、JEMA、日本ガス機器検査協会と共同で、10台のFCをガス機器協会に設置して運転を開始した。その内SOFCは2台で、京セラと東邦ガス―友精密工業グループが持ち込み、06年度までにデータを取得して07年度の規制緩和に繋げる。(日刊工業新聞06年1月18日)

(2)産総研
 産業技術総合研究所は1月18日、低温動作が可能な小型チューブ式マイクロSOFCの開発に成功したと発表した。動作温度は500〜600℃、試作したマイクロSOFCの大きさは長さ1cm、直径0.8〜1.6mmで、チューブ形状にすることによって、熱ひずみによるセラミックスが破損する危険性を回避した。燃料極にはセリア系イオン伝導性セラミックス、空気極にはランタンコバルトセリア系セラミックスが使われている。直径1.6mmのマイクロSOFCによる実験では、450〜570℃の水素を通過させたところ、0.17〜1W/cm2の出力密度が得られた。直径0.8mmのマイクロSOFCでは、約100本の集積化が可能で、これが実現すれば7〜15W/cm3の出力密度(体積)が可能と推測されている。今後はセルの集積化について検討し、最終的には小型で高効率なスタックモジュールの製造技術を確立することを目指す。(電気、日刊工業新聞、化学工業日報06年1月19日、日経産業新聞1月30日)

(3)ホソカワミクロン
 ホソカワミクロンの子会社“ホソカワ粉体技術研究所(枚方市)”は1月19日、SOFC用新規電極材料の開発に成功したと発表した。独自のナノ材料技術をベースにニッケルセリア系材料で燃料極を創生した。電極を構成する粒子は微細化するにつれて分散が困難になり、粒子が成長するという問題が発生するが、同社は独自のメカノケミカルボンデイング技術などを駆使することにより、電極粒子を100〜200nmの粒徑にまで微細化し、高分散化させることに成功した。これによりSOFCの動作温度600℃を実現するとともに、システムの起動に要する時間も1/3程度に短縮することが可能であると述べている。低温動作により、システムに使用する構造材料の選択幅が広がるので、コストの引き下げに結びつく。同社は新規電極を採用することにより、SOFCの低コスト化を進め、数年後には本格的な材料供給を始める計画である。(日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報06年1月20日)  
5.PEFC要素技術の開発
(1)埼玉工業大とエコデバイス
 埼玉工業大学の田中特任教授、エコデバイス(川口市)らのグループは、高濃度のCO中でも十分な発電能力を持つ電極の開発に成功した。この電極はCOに被毒しても短時間で機能が回復し、CO除去触媒を必要としない点に特徴がある。PEFCに導入して性能を確認しており、今後長期安定性の試験を行い、実用化を目指す。
 この電極は白金触媒を使うが、電極触媒に独自の加工を施しており、CO濃度が約800ppmの水素で、出力の低下は見られるものの、70%程度の出力性能を確保した。又電極表面が被毒しても、高純度の水素を通せば瞬時に性能が回復するという現象も発見されている。同グループは1%のCO濃度に対しても高い耐久性のある電極の製造が可能と判断しており、これが実現すればPEFCや水素精製の大幅な省スペースとコスト低下が可能になると期待される。(化学工業日報06年1月23日)

(2)旭硝子エンジニアリング
 旭硝子エンジニアリングは、中空糸膜式エアドライヤー“サンセップ”をFCシステム向けに応用展開を進める。同製品は水蒸気透過性が高いフッ素系非多孔質膜を用いたもので、空気やその他のガスの除湿や加湿に適している。PEFCでは高い反応効率を得るため水素や空気の湿度を高める必要があるが、同製品は水素の加湿に適しているとして、FC各社に対する採用を働きかける。(化学工業日報06年1月24日)

(3)凸版印刷と東工大
 凸版印刷は東工大資源化学研究所の原助教授らと共同で、PEFC向けに新たな電解質膜を開発した。この膜は、プロトン伝導性に優れる多環式芳香族スルホン酸をベースとする固体酸を、ナノメートルサイズで樹脂に分散させたもので、既存のフッ素系電解質膜と同等の性能を発揮することを確認している。この固体酸はプロトン伝導性に加えて耐熱性が高く、強酸度に優れながら水にも溶けないなどの特性を持つ。又非常に低コストで得られる材料であることから、フッ素系膜に比べて数分の1にまでコストを下げる可能性があると考えられている。同社は分散させる樹脂の最適化などを進めることによって、08年度を目標に実用化する意向。(化学工業日報06年1月24日、日刊工業新聞2月3日)

(4)JSR
 JSRは1月25日、芳香族構造の電解質膜を開発したと発表した。炭化水素系でありながら、ポリマー構造の基本設計に工夫を凝らすことで、フッ素膜を上回る機能を発現した。本田技術研究所と共同開発し、ホンダのFCV“FCX”のPEFCスタックに搭載した“アロマテイック電解質膜”を皮切りに、今後は携帯用DMFCや家庭用FCなどにこの技術を展開していく。
 従来のフッ素系電解質膜に比べてイオン交換基SO3-濃度が大きくなっており、プロトン伝導度が高く、氷点下でも膜抵抗が低い。又ガス遮断性、熱変形安定性、環境安定性などで優れているので、−20℃から95℃までの広い温度領域で発電が可能である。更にDMFC用に出力特性と耐メタノール透過性のバランスを改良した膜も開発した。
 筑波研究所に、セミコマーシャルプラントを設置し、既に製品供給を開始している。MEAでの事業化も検討していく予定。(電波、日刊工業、日刊自動車新聞、化学工業日報06年1月26日、日経産業新聞1月27日)

(5)アメリカ3M
 アメリカ3Mは、Nano Structured Thin Film(NSTF)触媒を用いたMEAの開発を進めている。カーボン担体を使わずに高耐久性・高性能を実現する触媒で、低白金担持のため低コスト化に貢献する。NSTF触媒は触媒活性が高く、化学的、熱的、電気化学的安定性に優れており、触媒層は薄いフィルム状の膜を形成する。高性能のため厚みを1μmまで大幅に薄くすることができるし、白金担持量も0.12mg/cm2と少ない。更にフッ素系電解質におけるフッ素の溶出も、従来の白金担持カーボン触媒を用いたフッ素膜に比べると1/75と小さいので、寿命は15〜20倍にまで長くなると考えられている。日本では住友3Mが開発および一部生産を行っている。(化学工業日報06年1月27日)

(6)長崎総合科学大学
 長崎総合科学大学は白金量を大幅に減らすのに有望な新技術を開発した。白金を含むペーストを電極全面にではなく、ペーストに溶剤を混ぜてドット(水玉模様)状に電極に印刷すると、ペーストの使用量が従来の半分でも同水準の発電量が確保できる。(日本経済新聞06年1月27日)

(7)FJコンポジット
 FJコンポジット(富士市)、精工技研、および小西安は、新開発のコンポジット材料と高速量産プロセスにより低コスト化した第4世代のカーボン樹脂セパレーターを拡販する。
 FJコンポジットが開発したFJカーボンは、粒徑が16〜20μmの黒鉛表面にフェノール樹脂をコーテイングしたコンポジット材料で、室温による成形と常圧でセパレーターを大量に硬化するプロセスを確立した。(化学工業日報06年1月31日)  
6.家庭用PEFC実証運転
(1)FCCJ
 FCCJは家庭用FCの設置に向けた全国共通のステッカーを発行・配布しているが、05年末までに通算の配布件数が200台を超えた。共通ステッカーは設置者の導入実感を高めたり、設置導入が始まっていることを周知するために企画したもので、第1号は05年4月に導入された首相公邸である。(電気新聞06年1月16日)

(2)東邦ガス
 東邦ガスは06年4月から家庭用PEFCコージェネレーションシステムのモニター導入の範囲を、一般家庭に拡大する。燃料の都市ガス。07年度までに50〜100台をモニター導入し、2010年から本格的な普及を進める考えである。(日刊工業新聞06年1月17日)

(3)新日石
 新日本石油は、LPGや灯油を燃料とする家庭用PEFCコージェネレーションシステムを設置し、運転データなどを提供するモニターの募集を始めた。LPG仕様は500台、灯油仕様は100台、何れも戸建住宅のみで、各燃料仕様に対してそれぞれ地域の指定がある。契約期間は3年間で年6万円。(朝日新聞06年1月21日、化学工業日報1月23日)
 新日本石油は中国の上海交通大学と家庭用PEFCの共同開発に着手した。共同研究を通じて、家庭用FCの技術ライセンス供与を行うほか、中国市場開拓につなげる。上海交通大学はFC研究所を持ち今後は年間数回の交流会を通じて共同開発につなげる。(フジサンケイビジネスアイ06年2月3日)

(4)浅野産業
 浅野産業(岡山市)はLPガス仕様の家庭用PEFCコージェネレーションシステムを岡山市内の一戸建て住宅に設置した。(山陽新聞06年1月27日)

(5)東邦ガス
 東邦ガスは、家庭用PEFCシステムを06年5月以降に、東海3県の顧客に順次設置し、一般家庭でのモニター試験を始める。(中日新聞06年1月27日)

(6)西部ガス
 西部ガスは、家庭用PEFCシステムの現地実証試験を1月から始めた。10台の機器を社員宅に設置、データを収集する。(日刊工業、西日本新聞06年1月31日) 
7.FCV最前線
(1)東京精電
 東京精電は1月23日、自社のFCシステムを搭載した移動店舗として利用できるFCV“FC Café”を開発したと発表した。車の後部にFCからのエネルギーを使って調理できる空間を設置、イベント会場や災害現場での利用を想定している。動力を得るために、水素燃料ボンベ(500L×2本)、FCシステム、鉛蓄電池、および電気2重層キャパシターを備えており、公道を走行することができる。(日本経済、信濃毎日新聞06年1月24日、日経産業、日刊自動車新聞1月25日、日刊工業新聞1月26日、日本経済新聞1月30日)

(2)ホンダ
 ホンダは新型FCVを3〜4年以内に発売すると発表した。05年10月の東京モーターショウに出展した“FCXコンセプト”カーをベースに実用化、全世界に投入する。(鉄鋼新聞06年1月27日)
8.水素生成、精製、貯蔵および輸送技術の開発
(1)三井鉱山等
 三井鉱山は、日立バブコックなどと共同で、コークス炉ガス(COG)を改質し、水素を製造する技術の開発に乗り出す。COGが保有する顕熱を利用してタール分を無触媒で熱分解し、工業的にメタノールやDMEなど液体燃料に転換できる合成ガスを製造することが目的であり、GTLの実用化を目指す動きとして注目される。06年度下期には北九州事業所のコークス工場に実証用のデモプラントを建設、水素をメタノールやDMEの形で取り出す実証運転を行う。コークス炉ガスから水素を大量かつ低コストで水素を製造する技術が開発されれば、FCV用水素供給での需要拡大が見込まれる。(鉄鋼新聞06年1月19日)

(2)フレイン・エナージー
 フレイン・エナージー(札幌)と北大触媒化学研究センターの市川教授らの研究グループは1月24日、効率よく水素の貯蔵や取り出しができる小型の装置を開発したと発表した。水素はベンゼンなど石油化学物質と化学反応させ、有機ハイドライドの形で貯蔵するが、同研究グループがアルミ表面研究所の協力を得て開発した装置は、水素をベンゼンなどに吸着させる際の触媒に、白金粒子を吸着させた酸化アルミニウム薄膜を使った点に特徴がある。従来使われていた活性炭と白金の混合物の触媒よりも大幅に効率がよく、小型化が可能になった。従来の装置の約1/30程の大きさで、能力はほぼ同じで最大20L/分の水素を貯蔵したり、取り出したりすることができる。(北海道新聞06年1月25日)
 フレイン・エナージーは、北大と共同で開発と実証を進めてきた有機ハイドライド(トルエン系とナフタリン系)による水素貯蔵・供給システムを、日立造船が開発した風力発電水電解システムと組み合わせて、風力発電で得られた水素を高効率に貯蔵するシステムの商品化に着手した。(化学工業日報06年1月25日、電気新聞1月26日、フジサンケイビジネスアイ1月28日)

(3)三菱化工機
 三菱化工機は1月24日、LPガスに対応した新型水素製造装置を開発、受注活動を開始した。内燃式水蒸気改質器でLPガスを水素ガスに熱分解する装置で、純度99.999%以上の水素ガスを得る。製造能力、50Nm3/h、100同、200同の3機種を商品投入、都市ガス対応機に加えて“ハイジェイア”シリーズとして品揃えを強化する。(化学工業日報06年1月25日、日刊工業新聞1月27日、日経産業新聞1月30日)

(4)IHI
 IHIはPEFC用水素生成に、既存のCu-ZnO系に代えて高活性なPd-ZnO系触媒を開発した。これまで困難であったパラジウム成分のナノ構造を実現する量産技術が確立でき、メタノールを原料にCOの副生を大幅に抑えながら、高い水素発生効率と長寿命化を達成した。新規メタノールオートサーマル改質器の実用化に目途をつけた。(化学工業日報06年1月26日)

(5)テクノバンク
 テクノバンクは、MgH2の微粉体を用いて水素を多量に貯蔵・製造する技術を開発した。15.3%wtの水素を貯蔵・発生できることが特徴で、既存の水素化アルミニウム錯化合物などに比べて性能が高い。具体的にはレーザーでMgOからMgを還元、Mgの分子間に水素原子を詰め込んだMgH2粉体を作製し、これに発火防止膜を施して製造する。MgH2は防水することにより安全に輸送し、備蓄できる。同社がイメージするマグサイル計画では、このMgH2をカセット化してスーパーやコンビニエンスストアに流通させ、FCや水素エンジンに用いることである。
 これを用いる新型のFCは“DWFC”と称するタイプで、発生する水を循環させ、MgH2が水を加水分解して水素を発生、これにMgの分子間に存在する水素を含めることにより水素の自重比を15.317%wtとする。すなわち投入する水素量比220%の水素を発生する。変換効率はDMFCの35%に比較して各段に高い94%であり、単位電力量当たりの装置体積を小さくすることができる。又MgH2が水素を発生した後に発生する水酸化マグネシウムMg(OH)2は、励起レーザーにより再び還元利用できる他、医療、工業原料や土壌改良剤、難燃剤などへの2次利用も可能である。
 テクノバンクはこれらの特徴を生かし、MgH2および新型FCの製造を国内外で展開する考えで、日本以外にアメリカや中国、ドイツにも戦略拠点会社を設立する予定で、出資を含む事業化のパートナーを探していく。(化学工業日報06年1月26日)

(6)エフ・シー・シー
 エフ・シー・シー(浜松市)と九州大学の北岡助教授のグループは、水素を生成する紙状の製品を開発した。同社の紙すき技術を活用して、水素生成の過程で必要な銅系触媒を紙にすきこむことに成功した。厚さ1mmで、紙に設けた数μmから数十μmの隙間に、粉末の触媒がすき込まれている。紙状のため、はさみで切断できるので、様々な形状に加工できる。メタノールを使った水素の生成効率は粉末触媒と同等であるが、COの発生は粉末に比べて40%減となった。(中日新聞06年1月27日)

(7)東ガスと日本特殊陶業
 東京ガスは日本特殊陶業と共同で水素製造装置を小型化するために必要な改質器の主要部材(モジュール)を開発した。都市ガス改質プロセスにおいて水素分離膜モジュールに改質触媒機能を付与、試算では従来に比べて改質器の大きさを設置面積で1/4、体積で最大1/6程度にすることが可能になる。考案したのは、直径9mm、長さ100mmで形状が試験管の形をした“触媒一体化水素分離膜モジュール”であり、セラミック製。管の内側に触媒機能、外側にフィルター機能を果たす分離膜を形成している。粒子状の触媒が不要で充填スペースを設ける必要がない。都市ガスの主成分であるメタンを膜面積1cm2当たり毎分6.6ccを導入した場合、純水素を同10cc取り出せる。(日刊工業新聞06年2月3日)
9.マイクロFCおよびDMFC技術の開発
(1)トクヤマ
 トクヤマは安価な鉄やニッケル等を触媒に使用し、DMFCと同等な発電効率を実現できる新しいFC用電解質膜を開発した。この電解質膜は炭化水素系でアニオン型であり、空気極から水酸化物イオンを燃料極(水素)の方向に透過させて電極反応を起こさせる方式である。発電出力密度は50mW/cm2でDMFC並みであり、コストは大幅に抑えられる。コストダウンを目指す携帯電話やノートパソコンメーカー向けに販売していく意向。(日経産業新聞06年1月23日)

(2)クラレ
 クラレはマイクロDMFCにおいて、発電効率を高められる電解質膜を開発した。材質は熱可塑性プラスチック(エラストマー)で厚さは約50μmである。膜には通常その表面に水素イオンを通過させるための穴があるフッ素系素材や炭化水素系素材を使うが、従来は穴の大きさがまちまちで水素イオンのみならずメタノールを通過させ、それがクロッスオーバーによる発電性能の低下をもたらしていた。今回開発した膜は、高分子加工技術を応用することにより、直径が小さい水素イオンのみを選択的に透過させる超微細な“水素イオンチャンネル”を表面に形成したもので、水素イオンの透過度を1.5倍に高めると同時にメタノールの透過量を6割に抑え、最大出力を1.6倍に向上させることができた。クラレはこれを使ったMEAを08年から量産する。(日経産業新聞06年1月24日、化学工業日報1月25日)

(3)韓国サムソン
 韓国サムソンSDIが、携帯マルテイメデイア・プレヤー(PMP)用DMFCの試作品開発に成功した。グループ会社サムソンAdvanced Institute of Technology(SAIT)との共同開発である。消費電力1.5WのPMPなら1回の充電で30分程度の短い映画8本を再生することができる。開発したDMFCは20cm3の液体メタノール入りカートリッジを交換することで動作を復帰する。SAITとは現在、次のカートリッジの最低でも10時間以上持つ更にパワフルなPMP用FCを共同で開発中である。(電波新聞06年2月3日)
10.FCおよび水素関連計測技術
(1)東北大
 東北大学未来科学技術共同研究センターの山中教授(未来材料評価学)らの研究グループは1月12日、水素ガスを高感度でかつ高速に検知するセンサーを開発したと発表した。センサーは水晶製で直径1mmの球体であり、すだれ状に電極を設置するとともに、表面の1部に水素ガスを吸着する合金の感応膜を張った構造である。電気を流したときにできる波動(表面波)の変化を付属の集積回路などで読み取り、水素ガスの有無を確かめる仕組みになっている。既に昨年考案していたこの種のセンサーを改良した結果、約20秒だった検知時間は2秒にまで大幅に短縮された。又球体センサーは表面波が球体上を回り続け、波の違いが増幅する特性を利用しているために、従来の方法に比べて感度が高く、回路も簡単なため、価格は5万円ほどに抑えられるという。07年での実用化を目指す。(河北新報06年1月13日、日刊工業新聞1月17日)

(2)チノー
 チノーはメタノール液の濃度測定装置“IRML”を開発、2月に発売する。DMFC試験評価装置への組み込み型で、従来品に比べて1/3程度に小型化した。価格は120万円。(日刊工業新聞06年1月20日、電波新聞1月23日、日経産業新聞1月27日)

(3)山武
 山武は1月23日、300msの高速応答を実現したデジタルマスフローコントローラー“CMQ−Vシリーズ”を開発、24日から発売すると発表した。価格は15万〜60万。同社独自の超微小熱式流速センサーを搭載した気体用の流量コントローラーである。FC評価装置としての需要を想定している。(電気、日刊建設工業新聞06年1月24日、日経産業、建設通信新聞1月25日、化学工業日報1月31日)
 山武は1mm徑の球状水晶の表面弾性波を(SAW)を利用した高速・高感度の水素濃度センサーの試作に成功した。10ppmから100%までの広範な濃度領域で検知し、応答速度は2秒以下の高速化を実現している。今回、FCV用水素ステーションに使用されるデイスペンサーの水素流量調整弁に組み込み、実用性を確認する。東北大学の山中教授の基礎研究を応用したもので、球状水晶にパラジウム合金薄膜や回路形成などを施し、水素ガスが接触したときのSAWを測定することにより、広範な濃度領域での高速検知を可能にした。(化学工業日報06年1月27日)

(4)宮入バルブ
 宮入バルブは感性デバイシーズと共同で、超低温液化ガスに対応するアドミッタンス式液面計を開発した。初年度は液体水素の実証設備向けを中心に10本の販売を予定している。(日刊工業新聞06年1月24日)
11.再生可能エネルギーとFCの連携システム
 サンエス電気(釧路)と、ドコモエンジニアリング北海道は2月1日、風力発電、太陽光発電とFCを組み合わせた新エネルギーシステムを創設した。風力、太陽光発電で得られた電力で水素を発生し、FCの燃料として使う。(北海道新聞06年2月2日)  
12.FC補機類および関連技術の開発
(1)神鋼JFE機器
 神鋼JFE機器(鳥取県倉吉市)は、バルク貯槽生産設備を増強した。家庭用FCは既存燃料のインフラを利用して水素を取り出す方法が普及しつつあるが、同社はLPG改質でFCを稼動する場合のLPG供給には、バルク貯槽が有効で普及すると判断し、生産体制を整えた。(日刊工業新聞06年1月16日)

(2)日本コントロール
 日本コントロール工業(埼玉県坂戸市)は、定容積型電磁ポンプを開発、FC用機能部品として4月に販売する。この定容積型は、定容積作動領域内で吐き出し量が一定で、電圧、温度、振動などによる変化が少ない。そのため加圧されかつ圧力変動のある槽内への液注入や車載用に適している。(日刊工業新聞06年1月19日、フジサンケイビジネスアイ1月23日)

(3)日本ガイシ
 日本ガイシはFC内で触媒湿度を保つガス拡散シートを大量に乾燥させる連続雰囲気炉を開発した。窒素などを充満させた雰囲気でガス拡散シートに塗布した撥水材を乾燥させる。金属製のツメで支えてワイヤで搬送する方法を採用することにより、乾燥品質を高めた。これまでの方法に比べて2〜5倍の速さで乾燥できるという。(日刊工業新聞06年1月25日)

(4)東京精電
 東京精電は電力の入出力効率を92%以上に高めたFC用系統連系インバーターを開発した。サイズは高さ48mm、幅420mm、奥行き310mmで小型化されている。価格は300〜500万円(日刊工業新聞06年1月26日)

(5)シチズン時計
 シチズン時計は水素ガス漏れ検出用センサー事業に参入する。水素センサーには接触燃焼式と呼ばれる方式を採用した。センサーはらせん状に巻いた白金ロジウムで、再度らせんを作るという2重構造を採用、衝撃を吸収しやすいため、耐久年数を1重らせんコイルに比べて2倍の10年に向上させた。サンプル品の出荷を開始した。(日経産業新聞06年2月2日)

 ―― This edition is made up as of February 3, 2006――